先生の研究は、地質学は現地をよく観察することが基本であるとの考えのもとに、一貫してフィールドワークを基礎とする、いわば古典的な手法によるものでした。また、資料・情報を広く収集してそれらを整理してまとめる。その中から問題点を適切に把握して次の方向を示唆する、そういう面では格別の才能を持っておられました。その裏には、平素の弛まぬ研鑚・勉強があったことが、残された多くのメモやノートから伺えました。
先生は仕事上を含めてその生き方はある意味では頑固で保守的だったといえるかも知れません。しかし、他人に対しては極めて寛容でありました。後輩・学生には物を良く見、事実に即して素直に考えることを求められる以外には、自らの考えや手法を強制されるようなことは決してありませんでした。
先生は研究・指導の傍ら地域への貢献にも熱心で、地質・地下水・温泉・自然環境の面について懇切な指導・助言・意見で対応されるとともに、地質図・地質誌などの貴重な資料を多く作成されました。また博識多才で豊かな詩情、視野の広さを持ち、交流範囲が広く、加えて非常に筆まめで、還暦から5年毎に私家版文集を4冊作成されています。何かを残すことに努めておられたのだと思います。
先生は読書家でした。残された書籍類は膨大な数でした。地学とその関連分野に限ってみても、和洋の専門書2600余冊、地質図類400余種、学会誌・論文集2200冊余でした。数百人分の別刷類のうち200人に近い方のものが製本されており、さらに、直接・間接に関与された主に石川県内の地質・地下水・温泉・自然環境等に関する未公開の調査・会議資料も少なからず保存されていました。散逸を防ぎ、後で役に立つようにとの思いがあったものと思われます。
平成16年11月1日
株式会社 エオネックス
代表取締役 市山 勉